妊娠や出産前後の時期(周産期)には体の不調とともに精神疾患が多いことは古くから知られています。
妊娠初期には悪阻(つわり)や倦怠感など身体的問題のため日常生活に支障が出ることがしばしばあります。これらに加え、初めての妊娠で戸惑うことは多く、ご主人の帰宅が遅く家族との時間が少なかったり、近くに両親がいない場合など女性へのサポートが乏しければ、妊娠や出産、更には育児への不安は高まり、不眠や抑うつ症状が見られることがあります。
女性にとって妊娠は体ばかりでなく、こころにも大きな負担となります。
妊娠初期ではふらつきや倦怠感などの体調不良の他に、流産の不安、出産や育児の不安、時に家庭と仕事の両立の悩みなどが生じます。
米国の調査では、出産した女性の8.7%が妊娠前39週間に、6.9%が妊娠中にうつ病を経験していることが報告されています。
日本では妊娠中に17.5%の女性が何らかの精神疾患を発症しており、16%はうつ病を発症しているという報告もあります。
妊娠期のパニック障害の有病率は1.2~2.0%、強迫性障害では0.2~3.5%という報告があります。家族らが妊娠中に辛くなるのは当たり前と考えて本人の体調不良や精神状態に関心が乏しかったり、本人が過度に頑張ろうとして不調を口にしない場合は特に、妊娠中にうつ病などの精神疾患に気付くことは難しくなります。
出産間近の患者さんから夜中に目が覚めることをしばしば耳にします。
中途覚醒が頻回となり日中に眠くなったり、頭がぼんやりするようです。そのためか出産直前には決して体調は良くありません。
しかし、このような不眠は妊娠直前ではよく見られる現象で、胎児への影響を考えると睡眠薬を服用する必要はほとんどありません。
出産後は夜中に何度も目を覚まして授乳することになりますが、妊娠後期の中途覚醒によってそういった出産後の生活リズムの変化に慣れるのかもしれません。
精神疾患があるため服薬しながら妊娠を希望したり、実際妊娠に至るケースは少なくありません。そのような場合、母親として胎児の健康を考え服薬を継続すべきか非常に迷うと思います。
実際に向精神薬に限らず風邪薬でさえ服用に迷い、結局服薬しないことも多いのではないかと思います。
妊娠中に抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬等の向精神薬を服用することにより先天奇形や出生時低体重、離脱症候群等のリスクが高まるなど胎児や新生児に影響する可能性があります。
一方、服薬の減量や中止により精神病状が悪化し妊娠継続が困難となったり、分娩中の事故のリスクが増加したり、出産後に育児が困難になる可能性があります。従って、妊娠中の向精神薬の減量や中止についてはリスクとベネフィットを慎重に考える必要があります。
向精神薬の減量や中止を実施する際には、患者さんが自己判断するのではなく主治医に相談し計画的に行う必要があります。
効果が不十分な薬剤を中止したり、薬剤の種類や服用量を減らしたり、胎児や新生児への影響が比較的少ない薬剤へ変更する必要があります。
女性の患者さんが精神疾患を抱えながら、出産し育児をする機会が増えています。
このような場合、患者さんと胎児、更には患者さんを支える家族への負担を極力軽減するために、計画的に妊娠出産することが望ましいです。
計画的に妊娠出産することにより、服薬の減量や変更・中止について、また出産後の患者さんへの対応や育児について十分話し合うことが出来ます。このような準備が出来ていれば、万一妊娠中や出産後に精神症状が悪化した場合にも落ち着いて対応できるのではないでしょうか。
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