強迫性障害

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強迫性障害

強迫性障害

「汚れているのではないか」「鍵をかけ忘れていないか」「他人に危害を与えていないか」などの特定の考えや不安が繰り返し生じる『強迫観念』と、「鍵や火元の確認」「手洗いやシャワー」「祈りなどの儀式的行為」「数を数える」などの行動を繰り返す『強迫行為』があります(表1)。
それらの行動が無意味であり不合理だと理解できているものの、不安を除くために一連の行動が止められません。

国際的な疫学調査では、生涯有病率は2%前後で、12か月有病率は1~2%です。恐怖症や物質関連障害、うつ病などに次いで高率にみられます。
男女比はほぼ同じですが、児童・青年期発症では男性が、成人発症では女性が多いです。平均発症年齢は20歳前後ですが、初診時の年齢は30歳前後とされています。

併存症は多彩で、大うつ病性障害は20~37%に併存が認められるという報告があり、生涯有病率は54~67%とされ、強迫性障害の患者におけるうつ病の併存はかなり高率と考えられます。罹病期間が長いほどうつ病が併存する頻度は高くなり、病気の長期化とともに2次的に出現することが一般的です。
その他に併存症として社会不安障害では生涯有病率は18~36%で、恐怖症やパニック障害などのその他の不安障害における生涯有病率は1~23%です。

治療法について

治療には認知行動療法や抗うつ薬があります。
治療法としては、薬物療法と非薬物療法を組み合わせることが一般的です。

○ 薬物療法

薬物療法としては、パロキセチンやセルトラリンなどのSSRI(選択的セロトニン再取り込阻害剤)が主に用いられます。効果が不十分な場合、他のSSRIを変更したりクロミプラミンに変更します。難治例では第2世代抗精神病薬による薬物増強療法が試みられる場合があります。

○ 非薬物療法(心理教育や認知行動療法など)

非薬物療法としては、心理教育や認知行動療法があります。
心理教育では強迫性障害に対する誤解を取り除き治療を継続できるよう、本人や家族の疾患に対する理解を促します。
認知行動療法は薬物療法と並んで重要な治療法で、曝露反応妨害法が最も一般的です。
問題となる不安感や不快感が軽減するよう、徐々に対象となるものや状況に長時間接する曝露と、その際にとられる不適切な行動を持続的に抑える反応妨害があります。
患者さんにとってはたいへん苦しい作業ですが、治療に対する不安を軽減しながら時間をかけて気長に取り組む必要があります。


外出する際の戸締りなどの確認行為や不潔恐怖などにより、治療のための受診自体が困難なことが多く、受診できない例は少なくないと思います。薬物療法に対する漠然とした不安や副作用に関する心配も多く、薬物療法を開始できないこともしばしばあります。

ICD10の診断基準は下記のとおりです。

  1. 強迫または制縛(あるいはともに)が、少なくとも2週間の間、ほとんど毎日存在すること。
  2. 強迫(思考や観念またはイメージ)や制縛(行為)は、次にあげる特徴をともに有し、これらのすべてが存在していること。
    1. 強迫症状は、患者の心に発したものであると認識されていて、他者からまたは何らかの影響を受けて入り込んだものではないこと。
    2. それらは、反復して起こり不快で、少なくとも1つの強迫または制縛は度を起こしていて不合理であると認識されていること。
    3. 対象者は、それらに抵抗しようとしている(もし非常に長時間にわたって続けば、抵抗が少なくなりうる強迫または制縛もあるが)、少なくとも抵抗し難い強迫が1つは存在していること。
    4. 強迫思考や強迫行為を実行することは、それ自体楽しいものではない(緊張や不安から一時的に開放されることとは区別せよ)。
  3. 強迫や制縛は苦痛の原因となったり、通常時間を浪費するために、対象者の社会生活や日常の仕事の妨げとなったりする。
  4. 主要な除外基準:この強迫は、統合失調症とその関連障害、あるいは気分(感情)障害のような他の精神障害によるものではないこと。

我が国の強迫性障害における強迫症状の内容と割合 (Matsunaga H. et al, 2008より)表1

強迫観念
攻撃性36%
汚染の心配48%
性的10%
溜め込み12%
宗教的8%
対称性・正確性42%
身体的12%
その他38%
強迫行為
洗浄行為47%
確認47%
繰り返される儀式的行為31%
数を数える14%
ものを並べる・整頓22%
溜め込み・保存12%
その他31%

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