摂食障害には主に神経性無食欲症(拒食症)と神経性過食症(過食症)があります。
食事や体重増加に対する不安や恐怖、体系・体重に対する歪んだ認識を背景に、異常な食行動がみられ、著しい痩せや体重増加などの身体症状を認めます。

  1. 拒食症(神経性無食欲症)
  2. 過食症(神経性過食症)

1.拒食症(神経性無食欲症)

痩せることや食事のカロリーに対する強いこだわりがみられ、痩せるために過度な運動を行うなど、徹底した努力が続くことがあります。一方で、体重が増えることに対する強い恐怖心があるため、わずかな体重増加でも強い不安感や抑うつ気分が出現します。本人の自覚は乏しく、明らかに痩せているにもかかわらず「太っている」と感じていることも少なくありません。

10〜20代の若い女性に多く、発症率は男性の10〜20倍とされています。痩せることが求められるようなスポーツ、モデル、バレリーナなどの分野では、特に発症率が高くなります。長年治療を受けていない場合や、治療によっても改善が得られない場合には、40〜50代になっても痩身状態が続くことがあります。

治療は、精神療法や行動療法が中心となります。二次的に出現するうつ症状に対して、抗うつ薬が用いられることもあります。精神療法では、痩せによって生じている生活上の困難に焦点を当て、治療への動機づけを行います。さらに、背景にある心理的な問題や家族関係の課題をテーマとして扱い、心理的問題の整理と解決を促します。

また、低栄養に伴う低血糖、不整脈、貧血、歩行困難などの身体的リスクについて正しい理解を促します。低栄養状態は生命にかかわる危険があることを理解してもらい、目標体重を設定し、体重増加を目指した治療を行います。治療は長期に及ぶことが多く、家族や精神科主治医、必要に応じて内科医など、医療者が連携しながら粘り強く支えていくことが重要です。

ICD-10における研究用診断基準

  1. 体重減少は(小児では通常のように体重が増加せず)、標準体重あるいは年齢と身長から期待される体重より少なくとも15%下回っていること。
  2. 「太るような食物」を自ら避けることによって起こる体重減少。
  3. 肥満に対する病的な恐怖を伴った太り過ぎというボディーイメージの歪みがある。このために体重の許容限度を低く設定して自らに課す。
  4. 視床下部-下垂体-性腺系を含む広範な内分泌障害が顕在化する。それは、女性では無月経によって、男性では性的な関心と性的能力の喪失によって確認される(明らかに例外的なものとして、避妊薬に代表されるホルモンの補充療法を受けていると、神経性無食欲症の女性でも持続的な性器出血をみることがある)。
  5. 神経性過食症の基準A, Bを満たさないこと。

過食症(神経性過食症)

食事に対する制御が効かなくなり、短時間のうちに大量の食物を摂取する行動が繰り返えされます。その後、体重増加への恐怖から、自己誘発嘔吐や下剤の乱用といった代償行動がみられます。
体重は神経性無食欲症ほど減少せず、正常範囲内で変動することが多いものの、肥満となる場合もあります。過食後には強い後悔や自責感が生じ、無気力感や抑うつ気分を伴うことがあります。

海外の報告では、若い女性の1%前後にみられ、3%以上という報告もあります。合併症として、うつ病、強迫性障害、社会不安障害、パーソナリティ障害、アルコール・薬物依存症が認められることがあります。

治療は神経性無食欲症と同様に、疾患への正しい理解を促し、食行動の適正化を目的とした精神療法や認知行動療法が中心となります。過食を抑えようとしても繰り返し失敗し、強い挫折感を抱いていることがおおいため、生活習慣や食習慣、睡眠リズムの見直しを行いながら、過食行動を抑えるための動機づけを行います。

認知行動療法では、体重や体型に対する歪んだ認識の修正を目指します。必要に応じて家族関係を精神療法のテーマとして扱うこともあります。消化器症状などの身体症状に対しては対症療法を行い、不眠、不安、抑うつ症状などの精神症状に対して薬物療法を併用することもあります。過食や自己誘発嘔吐などの行動に対して、SSRIなどの抗うつ薬の有効性が報告されており、使用される場合があります。

ICD-10における研究用診断基準

  1. 短時間の間に大量の食物を消費する過食エピソードを繰り返すこと(週2回以上の過食が3か月間以上)。
  2. 食べることへの頑固なこだわり、および食べることへの強い欲求または強迫感(渇望)。
  3. 患者は次に示すうちの1項目以上のことで、食物の太る効果に対抗しようと試みる。
    1. 自己誘発の嘔吐
    2. 自発的な下剤使用
    3. 交代制にみられる絶食の時期
    4. 食欲抑制薬や甲状腺製薬または利尿薬のような薬物の使用。糖尿病患者が過食症になると、インスリン治療を故意に怠ることがある。
  4. 肥満に対する病的な恐怖を伴う、太り過ぎというボディーイメージの歪み(結果的にやせ気味のことが多い)。