こんなことで悩んでいませんか?

- 気分が落ち込んだまま戻らない。
- やる気が出ず、仕事や学校に行くのがつらい。
- 眠れない日が続き、体調まで崩れてきた。
- あるいは、気分が高ぶりすぎて疲れてしまうことがある。
「この程度で受診していいのだろうか」と迷いながら、毎日をなんとかやり過ごしている方も少なくありません。
こうした状態が続く場合、気分障害の可能性があります。
気分障害とは
気分障害にはゆううつな気分や意欲低下などの抑うつ症状、気分の高揚や過活動、怒りっぽさなどが出現する躁症状が見られ、しばしば症状が繰り返されます。発症には環境の変化や役割の変化などのストレス要因がきっかけとなることが多いですが、ストレス要因が全く見られない場合もあります。気分障害には主に下記の障害が含まれます。
気分障害に含まれる主な疾患
- うつ病
- 双極性感情障害(躁うつ病)
- 持続性気分(感情)障害(気分循環症、気分変調症)
- 反復性うつ性障害
1.うつ病
主な症状
意欲がわかない、やる気が出ない、気分がゆううつ、興味がわかない、好きなことが楽しめないといった症状の他に、頭がすっきりしない、集中できない、作業が進まないなどの症状を認めます。入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒などの不眠、時に過眠も出現します。
頭痛や肩こり、胸の圧迫感や動悸、腰痛、めまいなどの体の症状を伴うことが多いため、初めは内科、整形外科、耳鼻科、産婦人科などを受診することが多いです。
うつ病の背景
就職や転職、職場や生活環境の変化、過労、対人関係や育児のストレス、経済的不安などがきっかけとなることがしばしば見られます。生涯有病率は6〜7%で12か月有病率は約3%、女性の有病率は男性の1.5~4倍です。実際に専門的な治療を受けている患者さんは1%に過ぎず多くの患者さんは適切な治療を受けていないと言われています。発病年齢の平均は23~26歳で、男性は55歳、女性は43歳までに95%が発病することが報告されています。
うつ病の治療
軽症の場合
極めて軽症な場合は、休養や生活環境の改善、運動などの気分転換、短時間のカウンセリング、一時的な業務負担の軽減で症状が改善する場合があります。
中等症〜重症の場合
症状が中等症あるいは重症の場合、病状が改善しないあるいは悪化する場合には抗うつ薬を初めとした薬物療法を行うことが一般的です。
抗うつ薬には
- SSRI(選択的セロトニン再取り込阻害薬)
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬)
- NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
- S-RIM(セロトニン再取り込み/セロトニン受容体モジュレーター)
- 三環系抗うつ薬
などがあります。
抗うつ薬で十分効果が認められない場合には、抗精神病薬やリチウム、気分安定薬などの薬物も用いられることがあります。
抗うつ薬は少量から開始し病状に応じて増量しますが、効果が乏しい場合には他の異なる抗うつ薬に変更します。
副作用として吐き気やむかつき、下痢や便秘などの消化器症状が比較的頻度が高く、眠気や不眠、時にはイライラや気分高揚などの症状が認められることがあります。
抗うつ薬の効果が表れる時期は服薬後1か月前後ですが、服薬後2週間~2か月と幅があり、服薬して直ぐに効果が見られることは少なく継続して服用する必要があります。症状の改善後に再発することが多く、病状が改善し直ぐに抗うつ薬の内服を減量中止した場合、2年以内の再発率は50%という報告もあります。抗うつ薬の内服は病状が改善した後少なくとも半年から1年間は続けることが推奨されています。
薬物療法以外の治療
- 生活習慣や睡眠習慣の改善
- 散歩や体操など負荷がかかりすぎない程度の軽度の運動
- うつ病について理解を深めるための心理教育(サイコエデュケーション)
- うつ病に陥りやすい考え方を認識し修正する認知行動療法(CBT)
- 対人関係の問題に焦点を当て対人関係全般の改善を目的とする対人関係療法(IPT)
これら非薬物療法と薬物療法を組み合わせることにより更に効果を発揮し、再発を予防する効果もあると言われています。(尚、当院では構造化された認知行動療法や対人関係療法、心理教育は行っておりません。)
DSM-5(※1)の診断基準
以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、あるいは(2)興味または喜びの喪失である。
注:明らかに他の医学的疾患に起因する症状は含まない。
- その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分
注:子供や青年では易怒的な気分もありうる。 - ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)
- 食事療法をしていないのに、著しい体重減少、あるいは体重増加(例:1ヵ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加
注:子供の場合、期待される体重増加がみられないことも考慮せよ。 - ほとんど毎日の不眠または睡眠過多
- ほとんど毎日の精神運動性焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)
- ほとんど毎日の疲労感または気力の減退
- ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめること、病気になったことに対する罪感ではない)
- 思考力や集中力の減退、または、決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の説明による、または他者によって観察される)。
- 死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画
- その症状は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
- そのエピソードは物質の直接的な生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。
注:基準A〜Cにより抑うつエピソードが構成される。
注:重大な喪失(例:親しい者との死別、経済的破綻、災害による損失、重篤な医学的疾患・障害)への反応は、基準Aに記載したような強い悲しみ、喪失の反芻、不眠、食欲不振、体重減少を含むことがあり、抑うつエピソードに類似している場合がある。これらの症状は、喪失に際し生じることは理解可能で、適切なものであるかもしれないが、重大な喪失に対する正常の反応に加えて、抑うつエピソードの存在も入念に検討すべきである。その決定には、喪失についてどのように苦痛を表現するかという点に関して、各個人の生活史や文化的規範に基づいて、臨床的な判断を実行することが不可欠である。 - 抑うつエピソードは、統合失調感情障害、統合失調症、統合失調様感情障害、妄想性障害、または他の特定および特定不能の統合失調スペクトラム障害および他の精神病性障害群によってはうまく説明されない。
- 躁病エピソード、または軽躁病エピソードが存在したことがない。
注:躁病様または軽躁病様のエピソードのすべてが物質誘発性のものである場合、または他の医学的疾患の生理学的作用に起因するものである場合は、この除外は適応されない。
※1 DSM-5とは、精神疾患の診断基準をまとめた国際的なマニュアルです。正式名称は 「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」 で、主に精神科・心療内科の医師が診断の参考として用いています。
2.双極性感情障害(躁うつ病)
主な症状
- 気分が高揚し多弁となる
- 睡眠をとらなくても平気
- 人と積極的に会うなどの過活動
- 無計画な買い物を繰り返し多額の借金をする
- 怒りっぽくなって会社の同僚や上司、さらには些細なことで店員を怒鳴る
本人は自覚できることもありますが、自覚できないことも多く問題行動を注意すると関係が悪化する場合があります。
うつ症状が出現することもありますが、出現しないこともあり、重度の場合幻覚や妄想を伴います。生涯有病率は1.2%で性差は認められません。平均発症年齢は17〜29歳で、単極性うつ病より発症年齢は若いです。病期のうちうつ症状を呈する期間は躁症状より多く、病状が変化することも特徴で年間約6回病状が変化し10回を超える場合もあります。症状が改善せず慢性に経過する場合が30%と言われています。
双極性感情障害の治療法
- 薬物療法
- 精神療法
- 心理教育
- 精神科リハビリテーション
躁症状の薬物療法
- リチウム
- バルプロ酸
- カルバマゼピン
- オランザピン
- アリピプラゾール
などの気分安定薬や非定型抗精神病薬が用いられます。
うつ症状の薬物療法
- ラモトリギン
- ルラシドン
- クエチアピン
などが用いられ、SSRIなどの抗うつ薬が使用されることもあります。
支持的な精神療法が基本となりますが、本人や家族の疾患に対する正しい理解や薬物療法への理解が重要であるため心理教育も行われます。
躁症状を繰り返すため同居している家族が疲弊している場合が多く、家族への精神療法も重要です。服薬指導の他に、飲酒や生活習慣に関する指導も必要に応じて行われます。
ICD-10(※2)における研究用診断基準
軽躁病
- 気分は高揚あるいは易刺激的であり、その程度は患者にとって確実に異常であり、かつ4日以上連続で持続すること。
-
次の徴候のうち3項目以上が存在し、日常の個人生活機能にある程度の支障をきたしていなければならない。
- 活動性の亢進、あるいは身体的な落ち着きのなさ
- 会話量の増加
- 注意転導性、あるいは集中困難
- 睡眠欲求の低下
- 性的エネルギーの亢進
- 軽度の浪費、あるいは他の型の無謀ないし無責任な行動
- 社交性の亢進、あるいは過度の馴れ馴れしさ
- エピソードは躁病、双極性感情障害、うつ病エピソード、気分循環症、神経性無食欲症の基準を満たさないこと。
- 主な除外基準:エピソードは精神作用物質の使用、症状性を含む器質性精神障害によるものではないこと。
精神病症状を伴わない躁病
- 気分は主に高揚、誇大的、あるいは易刺激的であり、患者にとって確実に異常なものでなければならない。気分変化は顕著であり、1週間以上持続しなければならない(ただし、入院を要するほどの重症の場合を除く)。
-
次の徴候のうち3項目以上が存在し(気分が単に易刺激的である場合は4項目)、日常の個人生活機能に重度の支障をきたしていなければならない。
- 活動性の亢進、あるいは身体的な落ち着きのなさ
- 会話量の増加
- 観念奔逸、あるいは思考の進み方が速いという主観的体験
- 正常な社会的抑制の喪失、その結果として状況に不適切な行動となる
- 睡眠欲求の低下
- 過大な自己評価、あるいは誇大性
- 注意転導性、あるいは活動や計画の絶え間ない変化
- そのリスクを患者が自覚しない無鉄砲あるいは無謀な行動、例えば乱費、馬鹿げた企て、無謀な運転
- 顕著な性的エネルギー、あるいは性的逸脱
- 幻覚や妄想は存在しないこと。もっとも、知覚障害はみられることがある(例えば、主観的聴覚過敏、色彩が特に鮮明に見える)。
- 主な除外基準:エピソードは精神作用物質の使用、器質性精神障害によるものではないこと。
※2 ICD-10とは、病気や健康状態を世界共通で分類するための国際的な基準です。正式名称は 「国際疾病分類 第10版」 で、精神疾患だけでなく、すべての病気が対象になります。
3.持続性気分(感情)障害(気分変調症、気分循環症)
気分変調症は過去には抑うつ神経症と言われ、うつ病と診断されない程度の比較的軽度の抑うつ症状が極めて長期にわたり持続します。通常成人早期に始まりますが、思春期より見られることもあります。
主な症状
- 抑うつ気分の他に疲労感や体調不良を感じる
- 何事に対しても努力を必要とし、多くのことに楽しむことが難しくなる
小児期や若年期で発症した場合や、成人後長期に渡り症状が続く場合は、気分の落ち込みやすさや身体の不全感が自分の性格から生じていると考えてしまい自分の性格の問題として悩み続け、結果として自己評価が低くなり自己肯定感を持つことが難しい場合が多いです。
気分循環症ではうつ病や双極性感情障害と診断されない程度の比較的軽度の抑うつ症状や躁症状を長年にわたり繰り返します。遺伝研究や症状、経過、治療反応などが双極性感情障害(躁うつ病)と共通することが多いため連続性が示唆されています。
薬物療法としては双極性感情障害(躁うつ病)の治療に準じることが多く、気分安定薬や抗うつ薬が用いられます。生来の性格と考えられる部分も多いですが、気分の上がり下がりが激しいことによる社会生活での生き辛さがあるため、疾患を理解し自分の行動を振り返りながら気分や行動をコントロールすることも重要になります。
4.反復性うつ性障害
うつ病エピソード(※3)を繰り返しますが、発症年齢や重症度、持続や頻度は様々です。しばしば生活上のストレスにより誘発され、男性より女性に2倍多くみられます。
一般的に初回のエピソードは双極性感情障害の場合より遅く平均発症年齢は40歳台です。各エピソードは3か月から12か月間持続し、持続期間の中央値は6か月です。エピソードの間には完全寛解となりますが、主として老年期ではうつ病が長引くことがあります。
※3 「エピソード」とは、うつ症状がはっきり現れている一定期間のことを指します。
薬物療法としてはうつ病と同様の治療が行われますが、難治性うつ病という側面があるため双極性感情障害としての治療が行われる場合もあります。うつ病相を繰り返す理由として服薬が不規則であることや、病状が完全に寛解に至る前に服薬を中止してしまうことがあります。
従って、服薬を遵守することや、完全に寛解に至るまで症状を治しきることが大切となります。さらに、仕事との関わり方として過度に責任を感じ頼まれた仕事を断り切れない、必要以上に長時間残業を行うなど、認知の歪みや行動のパターンが見られることが多く認知行動療法が有効な場合があります。
