睡眠障害とは

「寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」「朝すっきり起きられない」「日中の眠気で仕事や学業に支障が出る」――。
睡眠の悩みは誰にでも起こり得る一方、放置すると心身の不調につながることがあります。
睡眠障害とは、十分な睡眠がとれないことにより日中の活動に支障が出たり、苦痛を感じたりする状態を指します。他の精神疾患と合併することも少なくなく、睡眠の乱れをきっかけに、併存する精神疾患が再燃・悪化することもあります。そのため、早めの相談が大切です。
睡眠障害の種類
睡眠障害には下記の疾患が含まれます。
- 不眠症
- 概日リズム睡眠覚醒障害
- レム睡眠行動障害
- 睡眠時無呼吸
不眠症
不眠症とは
ストレスが多く不規則な生活を強いられる現代社会において、睡眠の問題は重要な課題です。疫学調査では、日本人の約5人に1人が睡眠に何かしらの問題を抱えていることが明らかとなっています。
睡眠障害によって、作業効率の低下、欠勤や遅刻、ミスの増加、交通事故、生活の質(QOL)の低下などが起こると考えられています。睡眠障害の中で最も頻繁に見られるのが、不眠を主訴とする病態(不眠症)です。
不眠症にはさまざまな原因がありますが、軽症の場合は、睡眠環境や生活習慣を見直すことで改善することも少なくありません。一方、中等症以上で薬物療法が必要な場合でも、適切な睡眠環境、規則正しい生活習慣、さらに睡眠に関する正しい知識は非常に重要です。
以下に睡眠障害を解消するためのいくつかの方法を紹介します。
睡眠時間について
「睡眠時間が6時間しかとれないが、もっと長く眠りたい。」と悩まれている方がいます。しかし、体が必要とする以上の睡眠をとることはできず、必ずしも何時間眠らなくてはならないという決まりはありません。
もともと睡眠時間が非常に短い人(5時間未満)や長い人(10時間以上)もいますし、年齢や季節によっても睡眠時間は変動します。睡眠時間に過度にこだわり過ぎないことが大切です。
生体リズムについて
生体リズムに最も大きな影響を与える要因は「光」です。入眠時に強い光を浴びると生体リズムが遅れやすくなるため、就寝前の強い光はなるべく避けましょう。
一方、起床時に日光などの強い光を浴びると生体リズムが整い、寝付きが良くなり睡眠も深くなります。「遅寝、遅起き」の悪循環を断つためには、起床時間を一定に保ち、概日リズムを整えることが重要です。
寝つきが悪いからといって起床時間を遅らせたり、昼寝で寝不足を補おうとすると、かえって夜間の入眠が困難になり、生体リズムが乱れてしまいます。こうした睡眠習慣を見直すことで、不眠が解消することもあります。
食事・入浴・運動について
就寝直前に食事をとると胃腸が活発に働き、頭が冴えてしまい、寝つきが悪くなったり深い睡眠が妨げられたりします。食事は入眠の3時間前までに済ませ、就寝時には胃腸を休ませておくことが望ましです。
また、就寝直前に熱いお湯に入ると体温が上昇し、寝つきにくくなることがあります。入浴はぬるめのお湯で、就寝の2時間前までに済ませるのがおすすめです。
午後の適度な運動は入眠を助けますが、夜遅い時間の激しい運動は逆に寝つきを悪くするため、なるべく控えた方が良いでしょう。
アルコール・嗜好品について
「睡眠薬を飲むくらいなら、寝酒の方がよい」と考える方も少なくありません。確かに少量の飲酒で一時的に寝つきが良くなる場合がありますが、深夜から早朝にかけて睡眠が浅くなり、結果として睡眠の質は低下します。
アルコールには利尿作用があり、夜間にトイレで目が覚めやすくなります。また、毎日飲酒を続けることで耐性が生じ、量が徐々に増えてしまうことがあります。長期間にはアルコール性肝障害・肝硬変やアルコール依存症といった病気の原因となる可能性があるため、飲酒は不眠の改善策として適切とは言えません。
カフェインには覚醒作用や利尿作用があるため、就寝前のコーヒー、紅茶、緑茶、ココアなどは控えましょう。
喫煙も一時的にリラックス感をもたらしますが、その後の覚醒作用により中途覚醒を引き起こすことがあります。ニコチンガムやニコチンパッチにも同様の作用があるため、注意が必要です。
睡眠環境について
音、室温、湿度、部屋の明るさなどの環境要因によって、十分な睡眠が妨げられることがあります。周囲のいびきや歯ぎしり、交通騒音などが原因になることもあれば、逆に無音状態が不安を高めて眠れないこともあります。
適切な室温・湿度・照明を整え、体に合ったマットレスや枕を選ぶことも、快適な睡眠には重要です。
心理的要因について
「眠らなければ」と強く意識しすぎるあまり、早い時間から布団に入ってしまう人がいます。しかし、眠ない状態で布団に入ると焦りが生じ、かえって眠れなくなる場合があります。
眠気を感じてから床に就くようにすると、入眠しやすくなります。
これらの工夫をしても改善しない場合は、身体疾患や精神疾患が背景にある可能もあるため、医師への相談をおすすめします。
不眠症の原因となる疾患
身体疾患
- 高血圧
- 腰痛
- 頭痛
- 喘息
- 糖尿病
- 過敏性腸炎
- 心不全
- 胃食道逆流症
- 睡眠時無呼吸症候群
等があります。
精神疾患
- 不安障害
- うつ病
- アルコール依存症
- 認知症
等が不眠症の原因となることがあります。
また、降圧薬、ステロイド薬、経口避妊薬、抗炎症薬、喘息薬、睡眠薬等の薬物が不眠の原因となる場合もあります。治療薬を服用している方は、主治医にご相談ください。
睡眠障害対処に関するガイドライン
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睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
- 睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない。
- 歳をとると必要な睡眠時間は短くなる。
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刺激物は避け、眠る前には自分なりのリラックス法
- 就床前4時間のカフェイン摂取、就床前1時間の喫煙は避ける。
- 軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング。
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眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
- 眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝付きを悪くする。
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同じ時刻に毎日起床
- 早寝早起きではなく、早起きが早寝に通じる。
- 日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる。
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光の利用で良い睡眠
- 目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン。
- 夜は明るすぎない照明を。
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規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
- 朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く。
- 運動習慣は熟眠を促進。
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昼寝をするなら、15時前の20~30分
- 長い昼寝はかえってぼんやりのもと。
- 夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響。
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眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
- 寝床で長く過ごしすぎると熟眠感が減る。
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睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
- 背景に睡眠の病気、専門治療が必要。
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十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
- 長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談。
- 車の運転に注意。
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睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
- 睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる。
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睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
- 一定時刻に服用し就床。
- アルコールと併用しない。
概日リズム睡眠覚醒障害
人間は通常、昼間に覚醒し夜に睡眠をとる「概日リズム)に従って生活しています。概日リズム睡眠覚醒障害では、このリズムが社会生活と大きくずれることで、不眠や日中の眠気、集中力低下、倦怠感などが生じます。
時差の大きい場所に行くと生じる時差ぼけも、概日リズムの乱れによるものです。
人間の概日リズムは24時間よりやや長いため、遅れる方向には順応しやすく、早めることは難しいとされています。そのため、遅寝遅起きの生活に慣れてしまうと、早寝早起きに戻すことが困難になります。
睡眠相が後退した場合、睡眠薬は効果が乏しく、かえって起床を困難にすることがあります。治療では、日中に太陽光を浴び、運動などの活動を行い、規則正しい生活を送りながら、少しずつ起床時間を早めるよう生活指導を行うことが一般的です。
レム睡眠行動障害
夜間睡眠中に寝言を言う、寝具をまさぐる、時には大声で叫んだり、傍で寝ている配偶者を蹴る、壁を殴るなどの異常行動が見られる疾患です。何らかの原因でレム睡眠中に本来抑制される筋活動が低下し、夢の内容が行動として表出すると考えられます。
不明な点が多く単なる寝ぼけや、高齢者ではせん妄や認知症と考えられることも多いです。
原因として神経疾患や薬物の影響が約50~60%を占め、原因不明の場合も少なくありません。パーキンソン病やレビー小体型認知症などの神経変性疾患、脳梗塞、肝炎、全身性エリテマトーデス、アルコールや薬剤の影響が原因となることもあります。
治療としては、睡眠環境を改善し、必要に応じてベンゾジアゼピン系薬物が用いられます。服用中の原因となる薬物が疑われる場合には、その薬物を中止することもあります。
睡眠時無呼吸
睡眠中に気道が閉塞し、無呼吸や低呼吸がうり返されることで、睡眠が分断される疾患です。激しいいびき、中途覚醒、窒息感、動悸、日中の強い眠気や居眠りが認められます。
肥満のほか、首が短い、小下顎、扁桃肥大などにより生じると考えられます。
夜間睡眠の分断により睡眠不足から日中の眠気が生じることで、記憶や集中力、注意力が低下し作業効率の低下や労働災害、抑うつ症状などが見られます。
また、夜間に酸素濃度が頻回に低下することにより高血圧症、肺高血圧、肺性心、不整脈、虚血性心疾患などの身体疾患が合併し、時に突然死が生じます。診断には終夜睡眠ポリグラフ検査が必要で、治療としては軽症の場合には減量、抱き枕等を用いて側臥位で眠ること、マウスピースがあり、重症の場合には持続陽圧呼吸療法(CPAP)が用いられます。
